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万引き家族

JUGEMテーマ:映画

 

「ワンダフルライフ」を観てファンに

なってから是枝監督の映画は映画館で

観るのを使命としてきたのですが、この

作品は結局観にいけませんでした。

パルムドール受賞の一報を聞いた時には

泣くほど嬉しかったのに。

 

これが公開されていたちょうど一年前、

自分の前に並べられた問題の量と、どれ

ひとつとして解決の糸口が見えないこと

に疲れ果て絶望感max状態で、この作品を

今観るのは自分的に賭けだなと思いました。

 

 

タイトルからして優しく平和で愛に満ちた

「家族」の話ではないだろうし(だいたい

あらすじは知っていたし)、そして自分が

抱えている問題、もほぼ「家族」の問題で

あり、心の中に常に暗いもやのようなもの

が立ち込めている状態で、この映画を観て

果たしてどうなのか、と。

 

おおげさに聞こえるかもしれないけど当事

の自分は「生」より「死」の方向を見つめ

ていました。それは精神を病んでいる時の

ように「死」に魅入られすべての選択肢の

中で「死」が一番ベストに感じられる、と

いうものではなく、もっと投げやりな、単

に「生」の方向を見ているのがしんどいから

いきおい「死」の方を見るはめになっている、

というものでした。「死」のことを考え始め

ると心のどこか健全な部分が吐き捨てるよう

に「雑だな」とつぶやいていました。そうだ、

それはあまりに雑すぎる、と思い直し気持ち

を立て直す日々でした。

 

あの頃にこの作品を劇場で観なかったのは、

やはり正解だったと思いました。

 

以下ネタバレを含む感想。

 

予想以上に容赦のない作品でした。

何よりヘビーだったのが、この家族の住む

部屋と風呂場の汚さ。生活臭が匂い立つよう

な、手で触ったらべとべとしそうな、現実感

がありすぎる部屋の様子に気がめいってくる。

 

清潔感というものがまるでない狭い空間の中、

祥太と呼ばれる少年の瞳がやたら美しく、

りんと名づけられた少女のたよりない笑顔が

切なくいとけなく、一見してすさんだ生活に

しか見えない日々の営みの中にある不思議な

あたたかさも次第に伝わってきて、だからこそ

よけいに、この行く末の真っ暗な家族の中に

ある子どもたちに胸苦しさを覚えます。

洗ったこともなさそうな薄い毛布でも、くる

まれている間はあたたかかったのだろうし、

安心して眠ることができたのでしょう。明日

がどうなるのかわからない毎日でも。

 

わりと悪い意味で印象に残ったシーンは(好き

なシーンとはとても言えないが心に残った)、

嵐の日、夫婦として暮らす二人(リリー・フラ

ンキーと安藤サクラ)が久しぶりに性行為を

する、という場面。部屋の中と同じように乱雑

でその場しのぎ。行為の前に食べていたのが、

そうめんというのがミソでそうめんが口に入った

ままのキス、事後にぶちまけられたのびきった

食べ残しのそうめん、とその生々しさに鳥肌が

立った。行為の後の安藤サクラの背中の曲線は

形としてとても美しかったけど、べっとりした

汗にコーティングされていて「ハエ取り紙」を

連想させた。

 

つかの間、愛を交わすシーン。もっと美しく、

もっと気持ちよさそうに撮ることもできたと

思うのに、あえて獣ように身を寄せて暮らす

家族の生活の延長線上にこれを描いたのだなあ

と思いました。

 

そして海辺のシーン。

圧迫感のある閉鎖的な空間から開放されて、

外の光あふれる広がりの中にある家族の明るさ

は終わりの予感に満ちていて、このシークエンス

の最後に映る樹木希林の「半分別の世界に行って

いる」としか思えない表情はぞっとするほど

すごかった。

 

全ての美しさと醜さ、全ての豊かさと貧しさ、

聡明さと愚かさ、慈愛、冷酷、優しさ、残酷さ、

がこの海のシーンに全部とけて、光の下、同じ

輝きを放っているように見えました。

 

ノーメイクの松岡茉優がきれいで、メイク

しているときよりむしろ好みの顔でした。

たぶん、いつもふんわりとしたやわらかい

印象になるようなメイクを施してると思う

のですが、化粧をしないと彼女本人の凛と

した硬質な、若干男性的な魅力が際立ち、

美しかった。こんな綺麗で優しくて賢い

娘がなぜ本当の家族からはみだしてしま

ったのか、この映画の中ではちょっとわか

りませんでした。

 

そして、一番気になったのはやはり、

「りん」ちゃんが今後どうなってゆくの

だろうかということ。

夏生(なつを) * 映画 * 16:50 * comments(0) * trackbacks(0)

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