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薄闇とレースのカーテン

JUGEMテーマ:つぶやき。

 

トラウマや心の傷って、掘り返すと案外とるに

足らないことが原因だったりする、というお話。

 

三島由紀夫には出生時の記憶があったそうだが、

私のもっとも古い記憶は2歳の時のある日。

なぜ2歳と断定できるかというと、記憶の中の

部屋の様子に見覚えがないから。3歳になる前

に越してきた家は細部まで記憶の画像に残って

いる。ということは、あの知らない窓辺にいた

のは2歳の私と父と母だ。

 

レースのカーテンが風に揺れていた。

寒くも暑くもない季節だった気がする。

父とは母二人して笑顔で、私に尋ねた。

「パパとお母さんとどっちが好き?」

新米父母にありがちなたわむれ。

 

しかし訊かれた私は真剣に悩んだ。

パパなのかお母さん(母は私にママと呼ぶことを

許さなかった)なのか。お母さんは好きだけど、

怒ると怖い。パパは怒らない、いつも優しい。

ということは、よりパパの方が好きということに

なる。だったら「パパ」と答えるか。でも「パパ」

と言ったらお母さんは悲しがって泣いてしまうので

はないか。お母さんは、女の人だから。

 

どうもすでに母はこの頃から私を厳しく叱り付ける

ことがあったこと、「女の人=男の人より弱い」と

いう偏見めいた思い込みがあったこと、に少し引く

が、2歳児は本当にそう思ったんだから仕方ない。

 

そこで私が答えたのは

「お母さん」

だった。

 

「やっぱりそうかー」みたいなことを言って父も

母も笑っていた気がするけれど、父の笑顔が少し

寂しそうだった、ような気がした。

 

この時に私に三つの傷ができた。

「嘘をついた」

「がっかりさせた」

「間違った選択をした」

 

当時の私が出した結論は「叱らないパパの方が

好き」だったのに「お母さん」だと嘘をついて

しまった。

 

そのことで父を(おそらく)がっかりさせて

しまった。がっかりしている顔を見た(ような

気がした)。

 

思ったとおりに「パパ」と答えればよかった。

なんならもう少し賢ければ「選べない、どっちも

大好き」とでも言えたのに。選択を間違えた。

 

うそつきで、「がっかり」することが多くて、

「がっかり」させることに罪悪感を覚える、

選択することが苦手な人間、一丁上がりだ。

私はまったく、そのような人物に育った。

 

両親は何も悪いことをしていない。

私もまた両親を別に傷つけてない。

にもかかわらず、がっつりと人格に影響する

ほどの傷になっている。

 

だから気をつけよう、お父さん、お母さん、

「どっちが好き」とかむやみに訊かないで!

とかいう話ではもちろんない。

 

いつも自分の行く手を阻む心の闇のような

もの、生きづらさの原因になっているもの、

というのがよくよくさぐってみると実は、

なんてことない拍子にできた傷が元だった

りする、ということが言いたかっただけです。

 

人の心はかくもやわらかく傷つきやすく、

傷は複雑に後々まで影響を残す。人を傷つけ

ない自分が傷つかない、どっちも無理なこと

なことだから、自分の傷を自分でさぐり、

触れて気づくしかないのですよね。

夏生(なつを) * ひとりごと * 17:59 * comments(0) * trackbacks(0)

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